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Bloody Signal

第26章 dear 千里√



「いい意味でも、悪い意味でも、人は変わっていく。変わっていくことも受け入れないと、いつか壊れるぞ」

「……零はそうなの?」


 彼の意見を否定するつもりはない。自分でもわかってるの、変わらないものなんて……ない。でもどうしてかな、反抗していく子供みたいな気持ちになっちゃって。ついそんなことを、彼に尋ねてしまった。


「俺は……どうかな。変わっていくことは仕方ないって思う、ただ……抗ってはみたいのかな、とは思う」

「零って大人だね」

「大人だったらお前にこんな話、しないだろ」


 そういうものなのかな? 零が困ったように笑うから、私は俯いた。


 どうして零が私に急にそんなことを言うのか、よくわからなかった。変わらないでほしいって願うことは、いけないこと? もしも今とは違う未来があって、よくわからないまま私がそこへ放り出されたとしたら……。

 ああ、どうするのかな……私は。


「悪い。俺が変な話をしたから、お前を困らせたみたいだな」

「え? あ、ううん……平気」


 微笑んで返せば、零はふっと薄ら笑みを浮かべるだけで黙って前を向いて歩き続ける。


 私達が歩んでいく先は、きっと今とは違う道だということだけはなんとなくわかっていた。






 教室の中、自分の席につけばタイミングよく先生が来て本日の眠たい授業が始まる。私が相変わらず、零のあの話を真面目に考えてしまっていた。きっと深い意味はないんだろうけど。

 ――ああ……眠たい、な。

 太陽のせいではないだろう。私は音もなく、机に突っ伏して瞼を閉じた。窓から吹き込む風を感じながら、眠る様に……ではなく、落ちていくように意識を手放した。



 海の底にいるような不思議な感覚が、全身を覆い尽くす。溺れていくような感覚はない、ただ……そっと目を開けると知っているような、知らないような場所に自分が立っていることに気付く。

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