第25章 calm 千里√
「ううん、何処も痛くない」
「そう……ならよかった」
保健室には灯りがついておらず、薄暗い。こんな薄暗い中で、千里と二人きりなんて……あんまり褒められた状況じゃないのだけど。どうしてかな、千里なら……平気だなんて思えてしまうのは。
じっと彼を見つめていると、ぱっとこちらを向いたのでぎょっとした。
「ごめん、電気つけたら起こしちゃう気がして……」
「あ……」
――気遣っていて、くれたんだ……。
私を起こさない様にと、わざと暗くしていてくれたんだ。なのに変なことを考えたりして、私ったら駄目なやつだ。
「ありがとう。その……気を遣ってくれて」
「ううん。暗い方が、よく眠れるでしょ?」
「……そうだね」
とても静かだ。今頃会場はどうなっているのだろうか?
「戻りたい? 会場に」
「え? あ、ううん……倒れたことで迷惑をかけたと思うから、いいんだ。このまま部屋にでも戻ろうと思う」
「もう少し寝ていた方がいいよ」
「……え?」
「顔色、悪いから」
「そんなことないよ? 別に寝不足ってわけでもないし」
「青白い顔で言っても、説得力ないよ。ちゃんと食べてる? 睡眠、取ってる?」
「うん……本当に、大丈夫だよ」
私ってそんなに今、体調悪そうな顔してるのかな。鏡も傍にないし、わからないや。でも言われてみれば確かに、頭がくらくらするような気もする。もしかしたらナルコレプシーじゃなくて、単純に体調不良で倒れちゃったのかな。
会場に来た時は、そうでもなかったのに。
ごちゃごちゃ考えていると、千里がまた私の頭を撫でた。