第25章 calm 千里√
私達の前には、常に道がある。無数の選択肢を掴み取りながら、選ばれなかった選択肢のことなど気にも留めず。止まってはいけない、振り返ってはいけない。そうやって自分に枷をつけながら、この道に間違いはないのだと信じていく。
もし何処かで後悔する時が来たとしても、一人じゃないのなら……大丈夫なんだと思う。
数えきれない愛を知って、数えきれない痛みを抱えて。
それでも誰かを愛していく、守りたいと強く願う。例えどんなに辛いことが待っていても、それでも私は思うのだ。
この気持ちに、嘘はないと……。
何処か遠くにあったはずの意識。あれ? おかしいな……私は確か……。そう気付いた時には、勢いよく飛び起きていた。
「あ、気が付いた……?」
「え……?」
横を向けば、椅子に座って本を読んでいる千里の姿が。よく辺りを見てみれば、ここが保健室だということを認識する。私……もしかしてまた。
「急に倒れるから、驚いた」
「やっぱり……」
「幸い近くに俺がいたから、怪我とかはしていないと思うけど……痛いとこ、ある?」
そう言って千里は、私の頭を撫でた。そっか、私またナルコレプシーで……そう思うと同時に痛いところはないかと自分でも探してみるけど、どうやら本当に大丈夫みたい。