第24章 tomorrow 零√
「ええっ!!? ちょっと、零!?」
空の小瓶は、いつの間にか気を失って眠っている優姫の元へと転がっていく。
「俺がお前を絶対に守るから。そんなこと、しなくていいんだ」
「零……?」
「俺と生きて行こう。例え何があっても、ずっと一緒じゃなくなったとしても……俺はお前の隣で、お前を想い続けていたいんだ」
「そんなの……私も同じだよ」
もしかしたら、どちらかが悲しい思いをすることになるかもしれない。幸せなんてどこにもないのかもしれない。零と一緒に生きていくことなんて、そんなの無理なのかもしれない。
どんなことにも終わりはある、それは今すぐに訪れるかもしれない。それでも。
「珠紀を愛して死ねるなら、俺は幸せ者だよ」
どうしようもないくらいに愛しい貴方が、私の隣で笑ってくれる。好きだと伝えてくれる。
「私、零のことを好きでいていいんだよね?」
「何変なこと言ってんだよ。勝手にすればいいだろ」
「好き、大好きっ」
「……はいはい」
「大好きだよ」
「ああもうっ……! うるせぇ」
月が笑う。あてのない旅の終わりを、祝福するように。
何処までも行こう、何処にでも行こう。私達が幸せになれるところを、探して。
歩き続けた全ての記録を残して、足跡を残して、私と零は肩を並べる。かけがえのない互いを傷つけ合いながら、溺れるように恋をして。
私達の先に待つのは、真っ暗で何も見えない未来。けど何も怖くない、彼の手があるのなら……怖いものなんて何もない。
「そういえば零、私があの頃入院していた時、毎日お見舞いに来てくれたよね」
「はあ? 俺があの頃お前に会いに行ったのは、最初に挨拶した時とお前が退院する時だけだったろうが」
「え……そうだっけ?」
「ったく、こんなことしてる場合じゃないな。あいつを追いかけないと」
「閑さん?」
「全てが終わったわけじゃないんだからな」
零が私の手を引いて部屋を飛び出す。
「零、この手を離さないでいてね」
「……ああ」
私と貴方の物語は、まだここから、始まったばかりなのだから。
The end of the world.