第24章 tomorrow 零√
「なぁ、その子のこと……助けたい?」
「……助けたい」
「その為に、記憶を消さなくてはいけなくても? 少女の、記憶を」
「構わない……。生きていて……くれるなら」
「幸い彼女は純血種である沙耶に、血を吸われて殺されたということかな。まぁ、体内に沙耶の血が残っているのなら望みはある」
「本当に!?」
にやりと眼鏡の男が笑む。
「ああ、ただこれからやろうとしていることは、例え少女の記憶が戻ったとしても、君を憎む結果になるかもしれない。それでもいいの?」
「それでも……それでもいいから! 俺を憎むだけで助かるのなら、珠紀が生きてくれるなら……俺はそれでいいんだ!!」
「……いい子だ。僕はこれでも医者だからね、任せなさい。じゃあ、あれを借りるとしますかね」
眼鏡の男は辺りを観察し始める。その間に、少年は珠紀に言い聞かせるように懸命に声をかけた。
「死なないで。お願い……もう一度、"俺"に……珠紀の顔、見せて」
◇
銃声音が鼓膜を揺らして、その衝撃で意識が引き寄せられる。まりあは私の首から口を離し、前方を睨み付けていた。私もつられるように、そっちへと視線を向ける。
「ぜ……ろ?」
「珠紀、お前なんで……こんなことに」
「久しぶりだな、零。まさかお前をここまで案じている人間の娘がいるとは思わなかったぞ。主人の声を久しぶりに聞けて、嬉しいか?」
「緋桜 閑……お前、珠紀に何をしているっ」
「こやつが零を助ける方法が知りたいというんでな、協力してもらっただけだ。黒主優姫を連れてくるようにな」
「珠紀お前……そんなことの為に、なんでそこまで」
やっぱり零は怒っているのだろうか? それもそうだよね、大切な優姫を連れ出して危険な目に遭わせて……。でもね。