第24章 tomorrow 零√
「……やっ、やめ……っ!!」
「んっ……いっそ、このまま死ね」
がりがりと脳に痛みが走る。
「いやだぁああああ……――っ!!!」
"珠紀"
誰かの声が聞こえた。
ぶつりと、意識が切れた。
◇
少年は歩く、歩き続ける。漂う血の香りを辿りながら、どうか無事であってほしいと願いながら。歩く。
「……あっ」
誰かが倒れているのが見える。しかし、その場に一気に血の香りが充満してむせ返りそうだ。慌てて少年は、その人へと駆け寄る。
「珠紀……? 珠紀っ!!」
少年は少女を抱き上げる。けれど目も当てられないような、悲惨な姿に少年は悲痛な叫びを繰り返した。
「なんで……どうしてっ! どうして珠紀が死ななくちゃいけないんだっ! おばさんも、おじさんも……良い人だったのに、どうして」
ぎゅっと、珠紀の身体を抱きしめる。
「お願い、目を開けて……目を、開けてよ……珠紀」
少年は珠紀の頬を撫でて、泣きながら微笑んだ。もしかしたら目を醒ますかもしれない、これは寝ているだけかもしれない。いや、勿論そんなはずはないんだ。彼女の身体、心臓部分には大きな空洞が出来ていたのだから。
「ああ……それはもう、助からないね」
「……え?」
少年が顔を上げる。すると眼鏡をかけた男の人が、二人を無機質は表情で見下ろしていた。
「君、その女の子の何なの?」
「え……? と、友達?」
「人間と、ヴァンパイアなのに?」
「……っ」
「ヴァンパイアの君が、人間のその子と友達? あひゃひゃっ、そりゃ傑作だ」
「それでも……珠紀だけなんだっ、俺を怖がらないで……ずっと、笑いかけてくれたのは」
「ふぅん……」
眼鏡の男は、しゃがみこんで少年の頭を撫でた。