第3章 Lady
「俺、またここに来るから。珠紀も来て」
「え?」
「そしたら、卵焼き……また食べたい」
千里の柔らかい微笑みが、私の瞳に映り込んだ。
息を呑むほど綺麗で、何度も瞬きを繰り返して見つめてしまう。その間にも彼は、私の手を取り念を押すように「ね?」と言ってくる。
そんな風に言われたら……断れないよ。
「いいよ、また作ってくる」
「よかった。それじゃあ、またね」
千里は私にさりげなくポッキンチョコの箱を握らせて、去って行った。
これ、貰ってよかったのかな?
去っていく彼の後ろ姿を眺めていると、不意にお昼休みが終わりチャイムが鳴り響いた。急いで私は、校舎内へと走って行った。
夜間部の人は、どうやら変わり者が多いらしい。玖蘭さんといい、千里といい。とてもマイペースで、けれど優しくて。
優姫の言っていた意味を、私はようやく理解出来た気がする。確かに夜間部は、私が思っているよりも悪い人達の集まりではないのかもしれない。
放課後、今日はすぐに帰ることが出来ない。何故なら、明日は大事なフラワーギフトデイがある為、放課後にある程度準備をしなくてはいけないからだ。
各クラスで少し前に役割分担がしてあり、私達のクラスは会場の飾り付け担当。
「珠紀、私と零は風紀委員の仕事があるから抜けちゃうけど一人で平気?」
「うん、大丈夫。言ってきて」
零は不機嫌そうな顔でこちらに近寄ってくる。なんだろう?