第3章 Lady
「夜空と普通の空、珠紀はどっちが好き?」
「……夜空、かな」
「なんで?」
「私、星が好きなの。月も好き。ずっと眺めていたいくらい、好き。だから私は夜空の方が好き」
「そうなんだ……俺は、夜の方が動きやすいから、夜空が好き」
「そういうと思ってた」
だって、夜間部は夜に生きる者達の集まりだから。
「ねぇ、珠紀」
「何……?」
「俺、珠紀と一緒にいる時間……好きかも」
「え?」
千里は突然だ。本当に突然、何を言い出すのかと思えば。
驚いて返す言葉が見つからない。無意識に、鼓動が早くなる。
「他の子達みたいに煩くないし。居心地いい」
千里はそう言って目を閉じた。そんな彼を、素直に綺麗だと思った。
私だって同じ。彼と過ごすこの時間は悪くないと思うし、ずっとこのままでもいいかもしれないなんてさえ思う。
「あ、そろそろお昼休み終わっちゃう」
「もう帰っちゃう?」
千里はじいっと私を見つめている。こ、これは帰るなと目で訴えているのだろうか……?
「うん。だって授業に遅れると、補習になりかねないもん」
「勉強熱心なんだね、珠紀は」
「凄く出来るほうじゃないから、普通のことをしておきたいだけだよ。授業に出てさえいれば、ある程度は大丈夫だから」
「そう……また、会える?」
「……会えるよ」
同じ学校に通う者同士だもの、きっとまた会える。