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Bloody Signal

第24章 tomorrow 零√



「あれ? 珠紀じゃないの。どうかしたの?」

「あのね……優姫に、お願いがあるの」

「どうしたの? 私に出来ることがあったら、何でも言って!」

「うん……」


 優姫に適当に説明をすると、いつも素直で真っ直ぐな彼女のことだから、真剣に応えてくれる。

 私は卑怯だ。何かを犠牲にしてでも得たいという欲求を抑えられず、こうして私は優姫を騙しているのだから。彼女のことをわかった上で、彼女が断らないと……わかった上で。


「こっちだよ、優姫」

「うんっ!」


 疑うことなく、私と共に月の寮へと来てくれる。月の寮まで来ると、少し戸惑った様子を見せるけれど、私は迷うことなく中へと突き進んだ。

 まりあの自室の前まで来ると、心の何処かで今優姫の手を掴んで走り去れば、間に合うのではないかという想いがこみ上げる。しかしそれを阻止するかのように、扉は内側から開かれる。


「待っていたわよ、珠紀。それに優姫さん」

「まりあさん……?」


 優姫はきょとんとするけれど、私は彼女を連れて部屋の中へと入っていった。

 ソファーに座るまりあの近くへと、歩み寄る。含み笑いを見せるまりあは、本当に楽しそうで嬉しそうで……。


「珠紀、こっちへいらっしゃい」

「……」


 もう後戻りなんて、出来ないんだ。まりあの手が、私の手に触れる。

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