第23章 ache 零√
「本当は、全部全部壊してやりたくて仕方ないんだ。お前がどうせ他の奴の隣で笑うなら、全部……消してしまいたい。どうせ傍にいられないなら、いっそのこと……お前を連れ去ってしまいたい。誰もいない、誰にも邪魔されないところへ」
「零……それって……」
「それでも俺はお前の気持ちに答えようとは思わない。なのに、お前を縛り付けたくて堪らないんだ。嫌な奴だろ? 俺は」
そんなことない、とは言えなかった。零が抱いている気持ちを初めて知って、戸惑いで言葉が出てこない。それを信じていいの? 本当だと信じていいの?
僅かでもいいから、零の中に私を留めていたい。そんな私だってきっと、凄く嫌な奴だ。
「珠紀……お前だけが俺の世界に存在してくれていたらいいんだ。他の奴らなんていらない。でも……お前と違う時間を生きる俺が、望んでいいことじゃないんだ。だから、これで終わりにしよう」
「ぜ……っ!」
彼の牙が、私の首元に埋まる。啜られる血、喉を鳴らす音、僅かに漏れる彼の吐息。全身で感じながら、零が口を離す。
「もう俺はお前の傍にいられない。俺の事は本当に、忘れてしまうんだ。お前が過去を忘れてしまったみたいに」
「な、何変なこと言ってるの! これからも、ずっと一緒じゃ……ないの!?」
痛む首なんて関係ない、そんなこと今はどうだって……いい!