• テキストサイズ

Bloody Signal

第23章 ache 零√



「錐生君と色々あった後から、調子が良さそうだね」

「……!」

「彼に吸血されることと、何か関係があるのかな? とても興味深いことだね」

「そんな言い方、しないで下さい……っ」

「ごめんね、君をいじめるつもりはなかったんだ。さあ、テラスまで行ってみたらどうだい? 君の望み人が待っていると思うよ」

「待っている……?」

「行けばわかることだよ」


 玖蘭さんに背を押され、私は渋々テラスの方まで行く。扉越しのガラス窓から見えたのは、零が一人佇んでいる姿だった。

 ゆっくりと扉を開ければ、零がこちらへと振り返る。


「そのドレス……ちゃんと着てきたんだな」

「うん……零が、くれたものだから」


 零の方から私の一歩、また一歩と近付いてくる。なんだろう、私少し緊張しているかも。目の前まで彼が来ると、久しぶりに見る彼の嬉しそうな笑みが視界に入った。


「よく似会ってる……」

「ありがとう……。少し、恥ずかしいかも。そう言われると」

「別に照れることはないだろう。似合ってないって言われるより、ずっといい」

「そんなこと言われたらへこむ」

「なら、今から言ってやろうか?」


 穏やかな時が、私達を包む。会場内にある喧騒が、まるで嘘みたいだ。何処までも遠く感じて、ここはまるで全てから切り離された世界のようだ。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp