第23章 ache 零√
「王子様は、お姫様に守られたりするのか?」
「え……?」
「頼ったり、弱音を吐いたり、寄りかかってみたり。それは違うんじゃないか? 逆だろう、普通」
零は困った顔をしながら、私の頭を優しく撫でた。いつもなら嬉しいはずなのに、何故か悲しい気持ちになっていく。変わらない零の態度、それはつまり彼の中で私は今までと何も変わらないということ。
彼の何でもないということ。それが、どれだけ切ない事なのか……。
「俺は守られるより、お前を守っていたいよ。ずっと、ずっとだ」
「私だって……っ!」
「……珠紀」
徐に零が私をぎゅっと抱きしめた。彼だけの香りがして、それに包まれて、言いたいことが全て溶け出して消えていく。ずるい、こんなの……ずるい。
「誰よりお前のことが大事だ、俺の何を犠牲にしたって構わない。それくらいだ。だから俺なんかの為に、そんな悲しそうな顔をする必要はないんだ。俺の事なんて、想わなくていいんだ
」
「なんでそんなこと……言うの?」
「……なんでだと思う?」
「そんなの……わかるわけ、ないよ」
何も言ってくれないじゃない、零が私をどう思っているのかも、どうしたいと思っているのかも。全て私に余すことなく伝えてほしいのに、そうしてくれないじゃない。そう嘆いてしまえば、零は全部伝えてくれる?
ううん、きっとしないよね。ますます何も言わなくなってしまうような気がする。私は……零が言ってくれるまで待つ。でも、それならいつまで待ち続ければいいのだろう……?
待つことは無駄? そんな日は一生訪れない?
それでも……私は……。