第23章 ache 零√
「……王子様みたいだね」
「あ? 何がだよ」
「私がピンチの時に、駆けつけてくれるから」
「何寝ぼけたこと言ってんだ……」
がっとゴミ袋を奪うように零は持つと、一人歩き始める。
「ど、どこいくの!?」
「どこって……これ捨てに行くんだろ? 手伝ってやるよ」
「でも……」
「どうせ俺はお前と違って暇だからな。ほら、行くぞ」
「うん……っ」
残りの袋を抱えて、零の隣に並ぶ。よかった……元気そうだ。
ぼんやりとした表情を浮かべてはいるものの、顔色はやっぱり良くはなさそうだ。白い肌が、一層白くなっているように思えて心配になる。
「零……体調、どう?」
「……普通だが?」
「嘘。そんな青白い顔して、私が気付かないとでも思った?」
「さあ、どうかな。お前、結構寝ぼけてる時あるし」
「今寝ぼけてるのは零の方だもん! ……そうじゃなくて」
「言いたいことはわかってる。だからってお前が一々気にすることじゃない」
「……そうかも、しれないけど」
ゴミ捨て場に到着する。放り投げるように零は袋を捨てていく中、私はその場に立ちつくしていた。
「おい、どうした?」
「……私って、そんなに頼りない?」
「珠紀……?」
「私だって、零が思っているほど弱くなんてないんだよ!? 一人で抱え込まないで、ちゃんと……頼ってほしいよ」
「……」
「お願いだから、いつまでも一人で抱え込まないで……」
零は何も答えない。こんな情けないことばかり言う私に、呆れちゃったかな? 怖くて零の顔が見れなくて、無意識に俯いてしまう。自分の足元を見つめながら、こうして彼を目を見て言うことも出来ない自分に、嫌気がさす。
頼ってもらえなくて、当然だよね。