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Bloody Signal

第3章 Lady



「んっ……美味しい」

「それはよかったです」

「凄い俺好み。いつもここでご飯食べてるの?」

「ううん。今日は、何となくここで。いつもは太陽の光が苦手で、避けるように教室で食べてます」

「へぇ……あ、俺千里。支葵千里」

「支葵君……?」

「千里でいいよ。あと、たぶん歳近いから敬語とか、いらない」


 あ、そうなんだん。年上かと思ったけど、玖蘭さんよりかは確かに年下には見えるかも。


「私は時東珠紀。夜間部の人がこんなところにいるなんて、思いもしなかった」

「まぁ、普段夜間部が出歩くことはないよ。俺は仕事で外出してたから」

「仕事……?」

「そう、これ」


 千里は一冊の雑誌を渡してきた。この雑誌……見たことあるかも。じろじろと眺めていると、ある違和感に気付く。この表紙の男の子……。


「もしかして、これ千里?」

「うん。俺、モデルやってるから」

「そうなの? 凄いね」

「……そのわりに反応薄いよね」

「ん? そうかもしれないね。たぶん、現実味がないからかも」


 目の前にいる彼は、雑誌の中に映る彼とあまり変わりはなくて。けれど実物の方が、数倍かっこいいとは思う。口には出してあげないけど。


「珠紀は変な子だね。普通俺がモデルだって言うと、きゃーって騒ぎ出してサインねだってくるよ」

「サインなんて貰って何に使うの?」

「……俺が知るわけないじゃん」


 芸能人に興味がない私には、サインの素晴らしさは理解出来なかったみたいです。

 千里はとても静かなタイプで、私がお弁当を平らげている間も、黙ったまま眩しそうに空を眺めて目を細めている。見ていると確かに顔は整っているし、かっこいいとも思う。

 夜間部の人と、こうして時間を共有していること自体私には不思議でならないけど。

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