第22章 Waltz 零√
「珠紀、起きてる?」
「え……優姫?」
「うん、そうだよ。ごめんね、朝早くに。えっと……今日から来週の舞踏会の準備があるからさ! 珠紀がサボらない様に私が見張っておかなくちゃと思いまして」
「そもそも準備が今日からあるなんて知らなかったから、サボりようがないよ」
珍しい、まだ何も変わり始めていなかった時のように、優姫が私を起こしにやってきたらしい。つい最近までしてもらっていたことのはずなのに、とても懐かしく思えた。
ずっと、こうしていられたらよかったのに……。
「今、開けるね」
鞄を掴んで扉を開ければ、いつもの優姫の笑顔がそこにあった。
「おはよう、優姫」
「うん! おはよう。今日も一日、頑張ろうね」
優姫の笑顔を脳裏に焼き付けながら、私達は登校する。
私は……優姫の笑顔を、彼女のこれからを狂わそうとしているのだろうか。こんなにも真っ直ぐで明るくて、誰にでも同じように接していく彼女を、私は……。
「珠紀、どうかしたの?」
「……ううん。なんでもないよ」
どうして、一人しか守れないのだろう。
どうして人は、こんなにも弱いのだろう。
全てを守れる強さがあれば、よかったのに。