第22章 Waltz 零√
「わかった、必ず……優姫を連れて行く」
「楽しみにしているわね、一週間後を」
私がしようとしていることは、きっと悪いことだ。それでもいい、零が助かるのなら……彼の苦しみが終わるのなら。
私は優姫を、犠牲に……。
そこでぷつりと、私の世界は突然シャットダウンした。
ゆらゆらと深い海の中。何処か、見たことのある人が私を出迎えた。
『貴方は……?』
『私? 誰だと思う? と言っても、きっと貴方にはわからないと思うわ。だって、貴方は過去のことを何も思い出せていないもの』
『私がなくした過去で……私は、貴方と出会っているの?』
女性は頷く。確かに覚えているようで、けれどなかなか思い出せずにいる。名前……。何故かそれだけは、ゆっくりと私の頭の中に浮かんできた。
『沙耶、お姉さん……?』
『驚いた、名前は思い出せたのね。そう、でも時期に忘れてしまうかもしれないわね』
『どうしてですか……?』
『だって貴方、徐々にナルコレプシーに陥る間隔が長くなっているから。私はきっと、消えるのね』
『私が何かしたんですか……? 貴方に』
『錐生零。彼が、貴方の血を吸ったから……だからでしょうね』
それとナルコレプシーが、一体どう関係しているのだろう?
訳が分からず首を傾げていると、沙耶お姉さんは何かを悟ったように話し始める。