第22章 Waltz 零√
「珠紀は、彼のことがとても気になるんでしょう? 錐生零のこと」
「……! どうして、知っているの……?」
「なんでだろうね? なんでだと思う?」
なんで……と聞かれても、私にわかるはずもない。
「あの……零を助ける方法、貴方は知っているんですか?」
「勿論、知っているわよ。助けたい? 彼を」
「……助けたいです」
「どうしても? そのせいで、貴方がどうにかなってしまうとしても?」
「……それでも……」
「ふぅん、結構強い意志を持って零のことを想っていたのね。びっくりしちゃった」
まりあは私に近付くと、怪しく私の頬を撫でた。じわりじわりと、私に言い聞かせるように。まるで牙を持って、私に毒でも植え付けるような棘のある彼女の言葉が、私の心を蝕み始める。
「彼を助けられるのは、彼をヴァンパイアにした者の血を飲むこと。私はその相手を知っているわ。貴方が私の願いを叶えてくれたなら、彼を助けるために手を貸してあげる。どう? やる?」
「……わかった、やるわ」
「いい子ね。黒主優姫、彼女を一週間後に私の部屋へ連れてきて」
「一週間後に……何かあるの?」
「普通科と夜間部の交流の為、舞踏会があるそうじゃない」
「……」
そう言われてみれば、クラスの女子達がその話題を口にしていた気がする。確かうちのクラスは優姫がじゃんけんに負けて……準備をさせられると聞いているけど。
「もし連れてこられなければ、交渉決裂よ。わかった?」
「優姫を連れてくれば、本当に零を助けるために手を貸してくれるの?」
「ええ、嘘はつかないわ」
……信じてみるしかない。人を疑っていたら、私だって零に信じてもらえなくなる気がする。迷いは、ない。