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Bloody Signal

第22章 Waltz 零√



「さっき言ったこと、嘘じゃないからね」

「あ……っ」


 まりあは軽快な調子で去っていく。追いかけようと立ち上がれば、千里の手が私の腕を掴んでいた。


「せ、千里……?」

「紅には気を付けて。本当に、気を付けて」

「え……? な、何かまずいことでもあるの?」

「……知らない」


 その言葉と共に、手が離される。どうしていいものかと迷ったけど、私は彼女に確かめておかなくてはいけないことがあるんだ。あの言い方だと、私が誰を想っているのかまるで知っている口ぶりだった。

 あの人なら、本当に零を救う方法を知っているかも?


「千里、ごめん……っ!」


 私は背を向け、走り出す。今ならまだ、まりあに追いつくだろう。





 ひたすら走りながら、彼女の姿を探す。そういえば、いつの間にか月の寮がある方へと入ってきてしまった気がする。門を通る時、何も言われなかったなぁ……。

 気付いた時には、もう既に月の寮の目の前まで来ていた。あれ? 扉を開けようとしているのは……。


「まりあっ!」

「ん……?」


 私の声に反応して、まりあが振り向く。やっと追いついた安心感からか、彼女の傍まで行くと一気に不足した酸素を取り込む様に、荒く呼吸を繰り返して息を整える。


「はぁ……はぁっ」

「そんなに急いで追いかけてきたの? ふふ、面白いわね、珠紀は」


 まりあはくすっと笑ってみせる。よく見てみれば、大人しそうで愛らしい雰囲気を纏っている。こう……誰にでも愛されそうな。

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