第22章 Waltz 零√
私が黙り込んでいると、千里はまるで私から切り出すのを静かに待っているみたいに、何も言わずにただ隣に座り続けている。私は私で……どう、言葉にすればいいのかわからなくて、少し戸惑っているのかな。
「あのね……私、恋をしたの」
どうしてか、その言葉が先に出た。千里は何も答えない。けれどきっと、聞いてくれているのだと信じながら……続けた。
「真っ暗な闇の中で、いつも私を助けてくれたその人は、私にとって太陽よりも眩しい存在だったの。閉じられた小さな私の世界の中で、彼だけは誰よりも何よりも輝いて見えた」
不器用で、けれど優しくて。強くて真っ直ぐで、面倒なことでも口先では毒を吐きながら、その行動の全てがとても優しくて暖かくて。
「そんな彼が、今とても苦しんでいて……私は彼の力になりたくて、そうやって試行錯誤してみたんだけど、駄目なの。全然、駄目なの」
今を変えることなんて出来ない? そんなの無理? それでも諦めたくないって思うの。ここで零を諦めちゃったら、私はこの先彼と一緒にはいられない気がしたから。
「助けたくて、そうやって必死に足掻いているうちにね……ふと思ったの。私はどうしてこの人の為にこんなに必死になっているんだろうって、それでね、気付いたんだ。ああ、きっと私は彼のことが好きだからなんだって」
「珠紀らしいね」
「そうかな……? えっと……だからね、その気持ちを彼に伝えてみたんだ。伝えたからってどうにかなりたいとか、そういうつもりじゃなかったんだけど……知っていてほしいと思ったんだ。でもそれは私のエゴなんだよね、嘘だって信じてもらえなかったんだ」
「目に見えないものを信じろって、難しい」
千里がぽつり、ぽつりと言葉を返し始める。