第21章 dusk 零√
「うっ……うあ……っ」
嗚咽が漏れる。一度溢れ出た涙は境目を失って、どんどん溢れてくる。同時に零への想いも流れていってしまいそうで、怖い。
零は私が泣き止むまで、そのままでいてくれた。
鼻を啜る。涙はどうやら、止まったらしい。ゆっくりと顔を上げれば、複雑そうな零の表情がちらりと見えた。
「泣き止んだか……?」
「……うん」
零は私の頭を軽く撫でると、いつもみたいに手をぎゅっと繋ぐ。
「帰ろうか」
「……そう、だね」
まるで先程の出来事を、なかったことにしていくみたいに。
零が私の手を引いて歩く。陽は沈み始め、街は夜を迎えようとしていた。零は少し早足で歩いていく。私はそれに着いていくのがやっとで……もう一度先程の話を蒸し返すことは出来そうもなかった。
程なくしていつもの見慣れた学園に戻ってくる。零は無言のまま、私を寮まで送り届けてくれた。
「じゃあな」
「……零っ」
思わず声をかけてしまった……。ぴくりと反応を示して、立ち止まった零が振り返る。
「なんだ……?」
彼の虚ろな瞳が視界に映り込んで、私は……もう今は何も言わない方がいいんじゃないかと思ってしまった。そりゃ、ちゃんとわかってほしいだなんて思ったりもするけど……本当に私は、零を傷付ける為に好きだと言ったわけじゃない。
だから……彼が嫌だというのなら、辛いというのなら……もう……。