第21章 dusk 零√
「ちゃんと私の話を聞いて! 私は零のこと、本当に……っ」
「やめてくれっ!!」
零は耳を塞いで、目を閉じていた。そこまで……そこまで拒絶するの? 私のことが、そんなに……嫌なの?
「これ以上俺を、惨めな気持ちにさせないでくれ。頼む……」
「っ……」
抱きしめてしまいたい。ぎゅっと、強く抱きしめて信じてくれるまで離さないでいたい。けれど……今にも壊れてしまいそうな彼を見て、どうしたら彼を救ってあげられるのか……幸せにしてあげられるのか。今の私には明確な答えがない。
何故傷付けることしか出来ないのだろう。こんなにも、こんなにも大切で守りたいただ一人の存在なのに。
「俺は……珠紀が俺の近くにいてくれるだけで……もうそれだけで、十分なんだよ。これ以上何も、望んだりしない……だから、もういいだろ? やめて、くれよ」
「私は……零にそんな顔をさせる為に言ったわけじゃ……ない、のにっ」
伝わらない。届かない。
瞼を閉じればぽろぽろと、涙が零れ落ちる。
信じてほしい、受け取ってほしい。願うことがたった少しの、ささやかなものなのに。それでも零は拒絶の色を見せて、悲痛に歪んだ顔で私に言葉を投げかける。
「どうして泣いてる……なんで、泣く」
「ちが……っ、勝手に涙が……うっ」
何度も何度も手で拭うけれど、次から次へと涙は溢れてくる。
「……っ、泣くなよ」
がばっと零が私の後頭部に手を回して、私は彼の胸元へと顔を埋めた。