第21章 dusk 零√
焦がれていた、惹かれていた。たった一人の貴方に。いつも私を照らしてくれていたのは、零の方なんだよ? 私が今日まで笑って生きてこれたのは、零がいたから……。
「私は、零のことが……好き」
気付けば口に出していた。今更それに気付いたけれど、訂正するつもりもなかった。零は首筋から勢いよく顔を上げると、驚愕で目を見開いていた。そんなに驚くことなのかな? でもまぁ、私が零の立場ならそうなのかもしれない。
「……お前……何を言ってるんだ?」
「何って……そのままの意味だよ」
すると零はふっと笑って、顔を歪めて私を見た。
「俺が好き……? 珠紀が、俺を? そんな言葉、信じられると思うか?」
「零……?」
「可哀想な俺に、同情しているのか? お前のいう好きは、嘘だ」
ざらつく声ではっきりと零が否定する。彼の瞳は不安定に、鈍く光っていた。
「俺の心の内を知った気分になって、同情心でも生まれたか? ははっ……あはははっ」
「そんなこと……っ」
「ないって言いきれるのか? 心の底から、同情心とは違うところから来る好きだっているのか?」
「言えるよ……!」
「嘘だっ! お前が俺を好きになるわけがないんだ!!」
零の瞳は何も映していない。私の姿さえも……。どうしたらこの気持ちを、信じてもらえるの? ねぇ、零……。