第20章 guilty 零√
「わぁ……綺麗っ!」
「まさかここにお前を連れてくる日が来るなんてな」
「残念?」
「いや、連れてこれてよかったと思ってる。お前とは……同じ景色を、同じ場所から見てみたいと思っていたから」
「零も……?」
「ん? 零も……って、まさかお前も?」
「うん、丁度同じことを考えてた。ふふっ」
零も同じことを考えていたなんて、意外だなぁ。私とはいつも、まったく違うことを考えていそうなイメージがあるから。
「やっぱり風が気持ちいい」
夕陽になり始めた太陽の中で、零の横顔があまりに綺麗で……。あれ? 零って、こんなにかっこよかったっけ?
「珠紀」
「へっ!? な、なに……?」
「人の顔ばかり見てないで、景色の方に目を向けたらどうだ?」
「あ……そうだね。ごめん」
困ったように笑う零も、またなんだか綺麗で。景色へと向けた今も、先程の零の顔が浮かんでは消えない。こうして隣にいられるなんて、変だね。不思議。
「ずっと、思っていたことがあるんだ」
「零?」
「お前がヴァンパイアに襲われたって聞いて、もしかしたら俺とお前は同じなのかもしれないって思った。その時お前は、今こうして生きていることを喜ぶのか、それとも呪うのか……どうしても聞いてみたいと思っていた」
「そんなことを……考えていたんだね」
「最低だろ? きっと俺は、それでお前が生きていることを呪えばいいと思っていた。俺と同じ苦しみを共有して、互いの理解者になればいいと……そんなくだらないことを思っていた。でも、俺とお前は違うんだ。それがわかって、今はほっとしている」
「どうして?」
「珠紀、お前は幸せになるんだ。いつかレベルEに堕ちて死ぬだろう俺とは違う、生きて幸せになることが望めるんだ。俺はお前がそう在れて、嬉しいとさえ思える」
「なんでそんなことを言うの!? まるで自分は……幸せになれないみたいに」
零は表情を変えないまま、言葉を続けた。