第20章 guilty 零√
『目が覚めたかい? 珠紀ちゃん』
『……貴方は?』
幼い私が、目の前の人へ問う。
『僕かい? 僕は黒主灰閻(くろす かいえん) 君を迎えに来たんだ』
『迎えに……来た? どういう意味ですか? それより、お父さんとお母さんは……何処にいますか?』
『……本当に、何も覚えていないんだね』
その人は、今では私のとてもよく知る人。そう、今の黒主学園の理事長だ。この時のことを、私は今でも鮮明に思い出せる。私が自分の幼い頃の記憶で、唯一思い出せる一番古い記憶だからかもしれない。
『君のお父さんとお母さんは……いなくなってしまったんだよ』
『どうして……ですか? なんで、いないんですか?』
『ごめんね。だから君は今から選ばなくてはいけないんだ。これから僕と一緒に暮らすか、それとも……永遠にこの白い世界で生きていくか。どっちがいい?』
『……そんなの、選択肢の意味が、ないじゃないですか』
『そうだよ。それでも君には、まだ選び取る権利がある。それだけでも選択肢が存在する価値はあるとは思わないかい?』
意地の悪い人だと思った。幼い私が、この白い世界で生きていくことを選ぶ取るわけもないのに。
『……一緒に、行きます』
『ありがとう。ごめんね……』
『話は済んだのか……?』
突如、色素の薄い髪と瞳の色をした、綺麗な少年が部屋に入ってきた。