第20章 guilty 零√
私達は共に残酷で愚かだと思う。
「……痛むか?」
「大丈夫だよ」
手を繋ぐ。そのぬくもりでさえ、何処か遠く感じる。零の心の内が見えない。彼が一体どうしたいのか、今何を思っているのか。汲み取れる程私は、まだ彼のことを知らなさすぎるのかもしれないと思った。
「早く戻らないとな」
「ねぇ、零」
「なんだ?」
「今度……街に行きたい」
「……。今度と言わず、明日行くか? 俺も特に予定があるわけじゃないし」
「いいの? 明日……普通に学校ある日だよ?」
「いいんだよ。別に一人でサボるわけじゃないし」
ぎゅっと強く手を握る。このままずっとこうしていたいなんて、そう思ってしまう自分が愚かで堪らない。
「明日俺が起こしに行くから、お前は特に目覚ましを用意しておく必要はないぞ」
「いいの? ちゃんと時間教えてくれたら、起きるよ?」
「いいよ。俺もお前と出かけたいからさ」
ようやく私の寮へと到着する。明日の約束があるからか、互いに惜しむことなく手を離した。
「零、私でよかったらちゃんと頼ってね?」
「急にどうしたんだよ……」
「急にじゃないよ。ずっと考えていたことだよ。零が……そうなってしまったことを知ってから、ずっと」
「そんなこと、お前にはどうでもいいことだろ。じゃあ、また明日な」
「零……っ!」
零は逃げるように立ち去っていく。そんなにこの話は、彼にとって人としたくないことなのだろうか。一人で抱えなくてもいいのに……私でも、それこそ優姫だって近くにいるのに。もっと、もっと頼ってくれてもいいのに。
私は少し肩を落としながら、手早く自分の部屋へと向かった。
夢を見た。懐かしい……そう、思える夢。
白い天井、白い部屋。そして独特な薬品の香り。ここは……。