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Bloody Signal

第2章 sleep



「零?」

「勝手にぶっ倒れて怪我されたら、目覚めが悪いだろ」


 ぎゅっと繋がった手。まばらに残っていた生徒達が、こちらを見ていた気がするけどすぐに教室を出たのでよくはわからなかった。

 零は優しい。私を連れて、寮まで送るだなんて面倒を敢えてしようとしてくれる。以前、零と優姫のいないところでぶっ倒れて、一週間目を覚まさなかった出来事があったせいか、それ以来二人は過保護なまでに送り迎えを申し出るようになった。

 嬉しいやら悲しいやら。

 友達にこんなことをさせるなんて、私ってほんとめんどくさい。


「おい、下ばっか見て歩くな。転ぶ」

「零が手を握ってくれてるから、大丈夫」

「……ったく」


 顔を上げれば、一歩先を歩く零の背中が見える。


「零、足速い……」

「お前が遅いんだろ」


 そう言いながら、歩調を合わせてくれる。優しいなぁ……。


「零、いつもごめんね」

「……なんか言ったか?」

「なんでもない」


 誰になんて思われていようと、優姫と零がいてくれるならそれでいい。私には、二人がいればそれでいいの。


「珠紀」

「ん……?」

「何かあれば、いつでも俺を頼れよ。すぐに駆けつけてやるから」

「……うん」


 ぎゅっと、彼の手を握り返してみる。


「俺が守ってやるから」


 零の言葉がじわりと心の中に浸透する。

 私はきっと優しい零に甘えている。こうしていつだって、私を連れ出すように引っ張っていってくれる彼に。


「あれ……零、今何かポケットから落ちたよ」


 音を立て、何かが彼のポケットから落ちる。なんだろう? じいっと見つめてみる。何かの入れ物?


「っ……、なんでもねぇっ!」


 乱暴にそれを拾い上げて、零は再びポケットへと仕舞う。彼が少し焦って見えたのは、気のせい?


「零……?」

「早く行くぞっ、俺は忙しいんだからな」


 また歩くスピードが速くなる。


 さっきの入れ物……もしかして。いや、そんなまさか。




 何かが少しずつ、欠けていくような気がして。でもそんなこと、私が気付くはずもなかった。

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