第19章 chain 零√
「君をここに呼んだのは他でもない、錐生君のことだ」
「はい……」
一体どんな話をされるのだろう? 零のこと……。私から、零の何を聞こうというのだろうか。なんだか怖くて、目を閉じて彼の次の言葉を待った。
「珠紀……君は錐生君のことを、どう思っているんだい?」
「え……?」
思わず目を見開いた。至って玖蘭さんは真剣だ。まさかの問いに、どう答えたらいいのかすぐに出てこない。言葉に詰まって俯けば、こちらへと玖蘭さんは近付いてくる。
足音がだんだん近くなって、それだけで緊張してしまうのは、玖蘭さんだから?
「僕は怒っているわけじゃないんだよ、珠紀。君に素直な気持ちを聞きたいだけなんだ」
「私の……気持ち」
「そう。君は錐生君のことを、どう思っているんだい?」
「私は……」
ずっと零を見て来た。彼の背中を見ながら、まるでその背を追いかけて行くかのように。ずっとそれだけを見ていた。
――零は私に、光をくれた。
眩しかった。手を伸ばしても、届くはずはないとわかっていたのに……。心のどこかでその光を常に求めて、私は走っていた。いつの間にか心も身体も大人になって、大切なものが曖昧になっていく。
何が守ることなのか、何が大切にすることに繋がるのか。
守っているようで傷つけて、臆病な心はいつも無難な選択に安堵してしまう。
でもそれじゃあ何も出来ないんだって、変われないんだって知って……。変わらないと、なんて思い始めて。