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Bloody Signal

第18章 dark 零√



「……お前はどうしたいんだ?」

「え? どうしたいってのは?」

「枢様に会ってちゃんと話し合えるのか? 中途半端なら容易くあの人にねじ伏せられるだけだぞ。どうするつもりなんだ?」

「……出来ることなら、今は少し逃げ出したいです。いつかは話さなくてはいけないとしても、それは今ではない……と思うので」

「……しょうがない奴だな」


 方向を変えて、英さんは私を連れて歩き出す。


「英さん……? 一体、何を……っ」

「珠紀に見せたいものがある。ちょっと着いてこい」

「……はい」


 英さんに手を引かれながら、木々を潜り抜けていく。顔を上げたところで森は開けており、そこかだ出ていくと息が止まる程の絶景が待っていた。





「なにこれ……白い、薔薇?」

「月の寮自慢の庭。白い薔薇園! 凄いだろ?」

「はいっ! とても……一体誰が手入れを」

「は? そんなの僕に決まってるだろ。この美しくも素晴らしい世界を留めておけるのは、勿論この僕だけ!」

「英さんが!? 凄いですね……」

「そうだろっ!? もっと褒めていいんだぞ」

「(結構面倒くさい人だな……)」


 それにしても、本当に庭はお世辞抜きで綺麗だ。白い薔薇を見ていると、やっぱり私は零のことを思い浮かべてしまう。今何処で何をしているの? あれからちゃんと部屋に戻れたのかな……。


「珠紀に何かあったかは知らないけど、そんなに若いうちから思い詰めてるとしんどいぞ。いいか? 人間なんでも適度が一番だ! そうじゃないと体調を崩しいつものいい調子が出なくなる。そうは思わないか?」

「そうかもしれませんね……。英さん、ありがとうございます」

「どういたしまして。で、どうする? 行くか? 枢様のところ」

「……ちゃんと行きます」

「そっか。じゃあ行くか」


 ”こんな世界……いっそのこと、全部消えてなくなってしまえばいいんだ”


 零の昨夜の言葉が、私の中で反芻する。零にそう思わせている原因は一体何? 誰かに何かをしようとすることが、こんなにも難しいとは思わなかった。

 月の寮に向かいながら、私は一つの決意を胸の内に秘める。

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