第18章 dark 零√
「おーい、珠紀」
「ん……? えっ」
何故か教室の入り口に、私を呼ぶ声がしたと思えば。その犯人は夜間部のはずの英さん。彼の登場で一気にクラスが騒ぎ出した。
「ちょっと用事があるから、来てくれないかな?」
「えっ……」
「いいからっ」
容赦なく教室に入って私の腕を掴んだ英さんは、どんどん普通科の校舎を抜けて夜間部の方へと向かう。
「あのっ! 何処に行くつもりなんですか!? それに用事ってなんです!?」
「厳密にはお前に用があるのは枢様だ」
「玖蘭さんが……?」
「詳しいことは知らないが……なんかちょっと怒ってたぞ。珠紀、お前枢様に何かしたのか?」
「……私があの人に何かできるわけないじゃないですか」
「それもそうだな」
英さんっていい意味でも、悪い意味でも素直な人だなぁ……。そこは普通、どうかな? とか濁したり誤魔化したりするところじゃないのかな。
英さんは夜間部の敷地内に入ると、ふと足を止めた。
「別にお前が枢様に何をしたかなんて、僕は興味ないけどさ。なんかお前……枢様に会うの、嫌がってないか?」
「そう見えますか?」
「……思い切り眉間に皺が寄ってる」
眉間に人差し指を押し付けて、ぐりぐりとしてくる英さん。何を私で遊んでいるというのだろうか。