第18章 dark 零√
「泣きそうな顔しやがって……馬鹿」
「零が私に心配をかけるのがいけないだけだもん」
「……また、明日な」
私の頭をひと撫でして、タオルを椅子にかけて静かに部屋を出ていく。追いかけてしまえばよかったのかもしれないけど、聞き訳のいいふりをして後を追わずに留まる。
「頼って、零」
私の手からすり抜けていく零を、どうすれば掴めるのかな?
朝になって、重い身体を引きずりながら学校へ登校すれば、そこには零の姿はなかった。
「おはよう、珠紀」
「優姫……零は?」
「さあ、まだ見てないけど。珍しく寝坊かな?」
へらっと笑う優姫だけど、首筋に大き目の絆創膏が貼られているのに気付いて、顔を歪めれば私の視線に気付いた優姫が目の色を変えた。
「あ……ごめん、見えちゃった?」
「ううん……大丈夫」
どうせ私も同じだ。優姫よりかは、上手く制服の隠せているけど、同じくらいの絆創膏で隠している。零に噛まれた痕を。
「何故かな? 私……いつも零に元気にしてもらってるのに、怖いって思っちゃったんだ」
「優姫……」
「おかしいよ、変だよね。いつも目の前にいる、零なはずなのにね……生意気で、不器用な零のはずなのにね」
「……いきなりあんなことがあれば、誰だって驚くし怖くもなるよ」
私が優姫の立場だったらどうだろう? 彼を怖いと思ったりしたのだろうか。