第18章 dark 零√
「これ……ちゃんと花だったんだ」
指先で触れようとすると、周りにある針にぷつりと刺してしまう。「あっ」と声を上げればいきなり後ろから腕が伸びてきた。
「あれ……?」
「何してんだよ、お前は」
ぷっくり玉になった血を、零が舐め取る。すぐに血は止まってしまう。お風呂上がりの石鹸の香りが零から漂ってくる。少しだけ恥ずかしいと思ってしまったのは、とても今更な気がする。
「サボテンの花を触ろうとしたら、失敗したみたい」
「失敗したってレベルじゃねぇだろそれ。絆創膏どこだ? 貼ってやる」
「絆創膏なんて持ってない。それにもう大丈夫だから」
「……そういうのはちゃんと常備しておけって。何かあった時に困るぞ」
「困ってないから平気だよ。零、気分はどう?」
「……もう大丈夫だ」
零はタオルを頭から被っては、私から表情を隠す。
見られたくないのかな……零が隠してしまった表情をどんなに想像してみても、なんだかしっくりこなくて諦めた。
「そろそろ自分の部屋に戻るよ。辺りも静かだしな」
「え……っ、私部屋まで送るよ」
「お前がちゃんと部屋に戻れる保証がないから駄目。俺なら大丈夫だから、そんなに心配すんだよ。いなくなったり、しないから」
見透かされていたのかな。