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Bloody Signal

第18章 dark 零√



「私は零の事が凄く、凄く大切だよ……。失いたくないって思う。だから、重すぎる荷物なら、私にも少し……背負わせてよ」


 生暖かい舌が、私の首筋を這うのを感じた。


「……珠紀……っ」


 ぐっと、急激な痛みが首に走る。喉の、鳴る音。


 私は静かに目を閉じて、ただそれを受け入れた。逃れられない枷を持ったというのなら、それを零一人に背負わせたりしない。貴方は私の……ヒーローだったから。

 ナルコレプシーのせいで馴染めない学校に、零と優姫だけが味方でいつも守ってくれた。それなのに私は……いつだって二人に何も返せないままだ。

 だからね、零。今度は私に貴方を助けさせて? そして、私にも零の抱えているものを一緒に背負わせてほしい。これは所詮私のつまらないエゴだけど……それでも、どうか。少しでも零が苦しくなくなるのなら。


「はぁっ……」


 零の息遣いだけが部屋を満たす。充満する血の香りで、なんだか気分が悪くなる。牙が抜かれる感覚がして、顔を上げた零と目が合った。

 瞳が赤く光り、口元の赤を再び零は手の甲で拭う。


「……珠紀? どうした、じっと見て」

「ううん……なんでもない。シャワー使う?」


 零には赤より、白が似合う気がした。あの日贈った白い薔薇みたいな。



 シャワーに入った零。部屋で一人になった私は、窓の外を眺める。夜に支配された世界の中で、目を開けて現実として今を感じていることが……なんだか嫌なようで、そうでもないようで。


 窓辺に飾られていたサボテンが花を咲かせていた。

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