第18章 dark 零√
「零、落ち着くまで私の部屋に行こうっ」
零を一人にしないことなんだ。
ようやく走った先、自分の部屋の前まで来て扉を開ける。暗い部屋の中に転がり込む様に、二人で入って扉を固く締めた。そこでほっとしたように、私は崩れ落ちるように息を切らして床に座り込む。
零も走ったせいか、荒く呼吸を繰り返す。
「零……大丈夫?」
「……はぁっ、お前……足速すぎ」
「そんなことないよ……。零が遅いだけ」
「……珠紀」
零はがばっと私の両肩を掴んで、床に押し倒した。今まで見た中で、一番と言っていいほど苦しそうな表情を浮かべて、制服に赤い血を付着させながら。なんともオカルトな光景だ。
「こんな世界……いっそのこと、全部消えてなくなってしまえばいいんだ」
「零……?」
「人間として、俺はお前の傍にいてやることも叶わない……っ。望んでこんな俺になったわけじゃないのにっ!! 俺は……俺は……っ! もっとまともな人間でお前を守ってやりたかったのにッ!!」
零がぎゅっと私の肩を掴む。
「……零。ずっと、一人で苦しかったんだよね……そう、なんでしょ? そんなに苦しそうな顔しなくていいんだよ。私はいつも零に守られていたよ。ちゃんと、守られていたから……何も心配することなんて、ないんだよ」
どんな言葉をかけてあげれば、彼を安心させてあげられるのかな。零は虚ろな瞳で私を映しては、首筋に顔を埋める。