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Bloody Signal

第17章 mirage 零√



「零……その牙と、血は……何?」


 赤い瞳、口元から淫らに零れる牙。そして彼の唇を濡らす赤い血液。その全てが現実でない気がして……。


「血への渇望に正気を失ったか、このヴァンパイアの面汚しが」


 凛とした声がこの場によく響く。それは何度も聞いたことがある、玖蘭さんの声。階段の下から上がってきた玖蘭さんは優姫の状態を見て、眉間に皺を寄せる。


「っ……枢先輩! 零を殺さない……で」


 零をまるで守る様に優姫が立ちはだかるが、ぐらりと上体を揺らし倒れそうになる。そこに玖蘭さんが間一髪助けに入った。お陰で優姫は床に身体をぶつけずに済んだ。


「彼女が立っていられなくなるまで、血を貪るなんて。そんなに優姫の血は、美味しかったかい? 錐生君」

「……っ、ゆう……き」


 瞳の色が元に戻っていく。脱力した零は、ゆっくりと床に座り込む。玖蘭さんの瞳がいつもと違って冷たくて、恐ろしく見えた。


「珠紀、大丈夫? 僕は優姫を保健室に運ぶけど、君はどうする? 着いてくるかい?」

「いえ……私の事なら気にしないで下さい」

「そう、それじゃあね」


 優姫を抱き上げた玖蘭さんはその場を去っていく。優姫……大丈夫かな。そこそこ血、流していたよね。


「錐生君に、珠紀。大丈夫かい? 物凄く怖い顔で枢君が出て行ったんだけど」

「理事長……」


 遅れて理事長がやってきた。理事長はすぐに零の肩を抱いて、私に告げた。

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