第17章 mirage 零√
「ん……!」
「どうだ?」
「美味しいっ」
「まぁ、当然だな。それ食い終わったら行くぞ」
「明日も零のご飯、食べたいな」
「ならいい子にしてるんだな」
こうやって零と穏やかな時間を過ごしていること自体、なんだかとても不思議。
「ねぇ、零」
「なんだ……?」
「いつまでも、こうしていられたらいいのにね」
思わず口から出てしまう。零がどう思おうと関係ない、私はいつまでも零と何でもない日常を過ごせたらいいなと思う。零は少しだけ浮かない表情で答えた。
「そう出来たら……どれだけいいだろうな」
零の求める今と、私が求める今はやっぱり違うのかな?
同じ時間を過ごして、傍にいて、それでも足りないと思ってしまうほどに零と過ごす時が、私にとって大切でかけがえのないもに変わっていく。
「んなこと言ってないで、お前はお前で次の試験に向けて勉強を怠るなよ。一緒に進級できなくなるぞ」
「そ、それは困る!」
他愛のない話を重ねて、それでも……私は何処まで零のことをわかってあげられてるかな?
私達はすっかり陽が落ち切った校内を歩く。無言の零にただ私は着いていくだけ。寮へと向かう建物の中に入って階段を上がっていると聞き慣れた声が聞こえてくる。
「零……? それに珠紀も」
そこにいたのは、優姫だった。