第17章 mirage 零√
目が覚めた先には、零の顔がすぐ傍にあって驚いて飛び起きた。そこで気付く。ここ……私の部屋じゃない、みたいだけど。
零はベッドの脇で自らの腕枕で座りながら眠っていた。もしかして、ここは零の部屋だったり? 辺りに視線を泳がせてみれば、零の制服が部屋にはかけてあった。ああ、やっぱりここは零の部屋なんだと実感したと同時に、どうして自分がここに寝ているのかが繋がらない。
あれ? どうしてなんだっけ?
「んっ……」
「あ、零起きた?」
「お前の方こそ……身体は何ともないか?」
「え? どういうこと?」
「お前、あの後すぐにナルコレプシーで倒れたんだぞ」
「そうだったんだ……」
「部屋に運ぼうにも、あのイベントの最中だ。他の女子生徒に見られるわけにもいかないだろ? 仕方なく俺の部屋に運んだ」
そうだったんだ、悪いことをしたな……。零は小さく欠伸を噛みしめて、起き上る。
「部屋まで送ってやる。今から戻るか?」
「今何時……?」
「昼の二時」
「ええっ!? が、学校は?」
「先生には休みって言ってあるから心配するな」
「でも……零は?」
「ああ。珠紀が一人で起きた時、どうしたらいいかわからなくなるところは想像できたからな。傍にいてやるから、寝たければもう少し寝てもいい」
「……私のせいで、学校休ませちゃったんだね。ごめんね」
私が俯くと、ふわりと零の暖かくて大きな手がぽんぽんと私の頭を撫でる。大丈夫だと、そう伝えるように。ずるいよ……いつだって零は私を甘やかしてくれて、だからこうして私は甘え続けてしまう。そして安心もしてしまう。