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Bloody Signal

第16章 tragic 零√



「珠紀と錐生君はいつから知り合いなんだい?」

「そうですね……この学園に入る、もっと前からの知り合いでした。小さい頃私が病院に入院していた時、何度かお見舞いに来てくれていたんです」

「優しいんだね、錐生君は」

「はいっ! いつもぶっきら棒で、不器用過ぎて人と衝突しがちですけど……本当に優しい人なんですよ」


 零のいいところなら、優姫に負けないくらい沢山言える気がする。それくらい零と時間を共にして、成長しながらこの学園に入った。私がいつもクラス内で苛められないで過ごせるのは、ほとんどは零のお陰。

 彼が私の近くにいてくれるから、誰も手が出せないみたい。まるで番犬みたい。というと怒られるので、心の中だけに留めておかなくては。


「ココア、御馳走様。珠紀はこれからどうするの?」

「一応零がこのイベントでの仕事を終えるまでは、会場の方にいようと思います」

「じゃあ……僕と一曲、踊ってくれないかな?」

「え……?」


 少し離れた海上の方から、音が漏れる。これは……ワルツの音。


「わ、私踊れませんよ?」

「いいよ。僕に合わせてくれるだけでいいから、ゆっくり……踊ろう。僕らのペースで」

「……はい」


 玖蘭さんに手を取られ、私は身を任せるようにゆったりと踊り始める。

 ゆっくり流れていく時間に、私達は言葉さえも交わさなくなる。音に耳を傾け、互いの体温を僅かに感じながら。けれどそれもすぐに終わっていく。音が止んだ。

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