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Bloody Signal

第15章 forever 枢√



「珠紀……」

「零……。いつも急でごめんね? 何も出来なくて、ごめんね……」

「馬鹿野郎。俺がそれを望んだか? お前に何かしろと、言ったのか?」

「……ううん、そんなことないよ」

「俺は俺で自分のこの身体を受け入れていく。お前も……そうなんだろう?」

「うん、そうだね」


 零が私に頭を優しく撫でる。嫌だな、ちょっとだけ涙が零れ落ちそうになる……。そうして顔を上げると、優姫が真っ直ぐ私に向かって駆け寄ってきて、その勢いで抱きしめられた。


「枢先輩と、幸せにね……」

「優姫……あの」

「何も言わないで。私はね、珠紀に幸せになってほしいってずっと思ってたから……だからね? 今の自分を好きになってあげてね」

「……優姫も、ちゃんと幸せになって。零と一緒に、幸せになって」

「うん……約束だよ、珠紀」


 優姫はそうしてゆっくりと、私から離れた。そっと枢が私の肩を抱いた。互いに何処か晴れやかで、なんだろうねこの気持ちは。


「珠紀、行こうか」

「うん」


 皆に背を向ける。

 私達は思い出の詰まったこの学園を今日、出ていく。何かを置き去りにしながらも、私達は互いだけを選択して生きていくのだ。


 形は様々だけれど、それでもきっと後悔しない選択をすることの方が、ずっと難しいように思う。言い訳のように言葉に言葉を重ねて、自分さえも誤魔化して生きてしまう。

 これでよかったと、人生の中で何度思うことが出来るのだろうか?

 数えきれない痛みを知って、何も出来ない自分を知って。嘆いて足掻いて、醒めない夢をまるで見続けているかのように迷いの森へと足を踏み入れる。


 求めていく、信じていく。

 愛した人をこの腕に抱いて、そうして初めてその全てが霞んで見えていく。


 この人だけが私の心を捕えて離さない。愛ある檻の中で、私達は愚かな永遠を誓うのだ。


「珠紀……どうかこの手を、離さないでいてね」

「大丈夫だよ。私は枢の手を……けして離さないから」


 どうか今しばらく、この愛が永遠でありますように。




 The end of the world.
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