第15章 forever 枢√
「もしも僕が君を傷つける日が来たとしても、君はどうする?」
「……枢。人もヴァンパイアも、等しく誰かを傷つけずに愛することなんて出来ないんですよ」
「……。そうかも、しれないね」
月が消える。朝が来る。眩しくて気だるい朝が。
枢の手を握り締めて、互いに指を絡めて存在を確かめ合う。
朝靄の中で、もう一度誓うようにキスをした。
遠ざかる明日、続いていく今日。私は小さく息をする、手にした大きな鞄を掴み上げて空を仰いだ。ああ、太陽って本当に眩しい。目が眩む……けれどこの先に待つ何かを考えてみれば、なんでもいいのかもしれない。
うん、いいお天気。
この黒主学園敷地の入口、正門まで鞄を持って歩いていくと見慣れた顔ぶれが私を出迎える。優姫、零、一条さん、理事長、そして……私のたった一人、愛しい人。
「遅いぞ! 珠紀」
「優姫達が早いだけだもん」
「もう、こんな時にお寝坊さんかな? こちょこちょ」
「……っ! や、やめてっ!!」
「おいこら優姫、珠紀。その辺にしておけ、玖蘭がこっち見てるぞ」
「うっ……すみません、枢先輩」
「私は悪くないよ……?」
「珠紀」
枢の真剣な声にびくっと肩が震えた。もしかして怒ってる? ちょっとだけ寝過ごしてしまったことを、彼は怒っているのだろうか?