第15章 forever 枢√
「あの……まりあ、は?」
「……珠紀は知らなくていい事だよ」
「どういうことですか? ちゃんと教えて下さい……お願いします。もう知らない顔なんて、したくないんです」
「……。まりあ自体は特に何もないよ。ただ、彼女の中には緋桜 閑という純血のヴァンパイアが乗り移っていた。だがその閑も死んだ……」
「死んだ? どうして、ですか……?」
「それは話せば長くなるから、また今度でもいいかい?」
枢が困った顔をしたので、仕方なく口を閉ざした。そういえば……手へと視線を向ければ、やっぱり。あの小瓶が手の中にある。夢じゃ……なかったんだ。
「枢、聞いてくれますか……?」
「なんだい?」
どうしよう。こんな改まったことを、こうして口にするのはとても気が引ける気がする。でもちゃんと言いたい、それは私の気持ちだから。枢を想う……私の確かな気持ちだから。
しっかりと枢の瞳を見つめる。
ああ、綺麗……。
「枢……私は貴方が好きです、大好きです」
黒と白のコントラストの中。人間の私、ヴァンパイアである私、どちらも私にはなんだか自分ではない気がして……眠っている間だけが私にとっての私で、それが私の世界だと思っていたのかもしれない。私にとって世界は、常に閉じられていたから。
ナルコレプシーの海の底。私は断片的な世界の中で、優姫と零に出会った。暖かくて優しくて……目覚めた白い病室の中で、誰もわからず誰も信じられず。それでも身寄りのない私に手を差し伸べてくれた理事長。