第15章 forever 枢√
「沙耶。その身体を乗っ取って再び私と共に来ないか? それとも……貴方の愛した人を奪った娘を救おうとでも言うのか?」
「血を通してその娘の意思を乗っ取る悪魔」
「……可笑しなことを言うのね。私はヴァンパイアよ」
「その娘をヴァンパイアにしたのは、お前だぞ? 沙耶」
沙耶は顔色一つ変えない。それが面白くないのか、閑は扉が開く音に反応を示した。
「よく来た、待っていたぞ……零」
二人の有様を一人、沙耶はただ眺めていた。
◆
暗い暗い闇の底、そこで見た……一人の女性。
『貴方は……沙耶、お姉さん?』
『目が覚めたようね、珠紀』
はっきりと、今までよりも輪郭がわかるほどに。沙耶お姉さんは私を見つめると、ゆっくりを口を開いた。私……この人に今から何を言われるのか、なんとなくわかる気がする。どうしてかな? 不思議……だよね。
『思い出したのね、全てではないけれど』
『そうですね、思い出しました……断片的では、あるものの。本当だったんですね、私の両親を殺したこと』
『驚いたわね。貴方……取り乱さないのね』
『もう過去のことですから』
怒りがないかと問われれば、きっと私は答えられない。思い出せば蘇る痛みに、もう忘れることも出来ないのだから。それでも目の前にいる人に、私は罵声を浴びせることも出来ない。