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Bloody Signal

第15章 forever 枢√



 頭の中にノイズが走る。けれど、それは不意に止む。息を呑むほどの威圧感が、私の体内を駆け巡り始める。これは何? この感覚を、私は一度だけ憶えている気がする。心臓が鳴る、鼓動を刻む。入れ替わっていく……何かが。


「やっと目を覚ましたのね、沙耶」


 私の意識が遠くなる、何処までも何処までも暗い闇へと沈んでいく。

 沙耶? どういう……こと……?





 ◆




 ゆらり、珠紀の手は迷うことなく、まりあの首を掴み上げた。


「私の眠りを呼び覚ますのは、貴方ね? 閑」

「随分なご挨拶じゃないの、沙耶。貴方がいつまでも起きないから、私は本当に朽ちてしまったのかと思ったわ」

「……別に目覚めるつもりはなかったのだけど」


 珠紀の姿をしながら、まりあに沙耶と呼ばれている。彼女は掴んでいた手を離すと、まりあは小さくせき込んだ。


「閑、悪いことは言わないわ。この身体を食らっても貴方の望みは叶わない」

「それはどうかしら?」


 部屋の奥から一人の少年が姿を現す。少年は着物を着た一人の女性の身体を抱き抱えていた。


「あれが本体ね、閑」

「そう……貴方がいなくなった後、色々と苦労したのよ。私達……仲間でしょ? 大切な人を無残にも人間に奪われたヴァンパイア同士」

「……まだそんなことを言っていたのね」


 まりあが女性の身体に近付き、額へと口をつけると女性は閉じていた瞼を開ける。まりあは糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


「一縷、まりあの身体を運んでおきなさい」

「はい、閑様」


 閑、彼女は着物を整え再び珠紀……いや、沙耶の前へ立つ。沙耶の瞳はヴァンパイア特有の赤い瞳に支配されていた。

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