第14章 birdcage 枢√
「珠紀は……沙耶さんのこと、覚えてる?」
「……え?」
「知ってるんでしょ? 沙耶さんのこと」
「どうしてまりあが、それを知ってるの……?」
まりあはにんまりと笑みを浮かべた。
「だって私……沙耶さんと知り合いだったもの。厳密にはあっちの私が……なのだけどね」
「あっちの、まりあ?」
「……別に貴方に隠すことでもないから教えてしまうけど。この身体は借り物なの。本当の私の身体は別にある……」
まりあが私に手を伸ばす。急にどっと、恐怖が押し寄せた。まりあの瞳が冷たく赤く光っていたからかもしれない。
「人間のままの貴方でもよかったけど、今の貴方の方が好都合かもしれないわね。本来の力の半分は受け継いでいるみたいだから……」
逃げなきゃ。そう思うのに……身体が上手く動かせない!
「逃がさないわよ? やっと見つけた……私の獲物なのだから」
まりあが私の肩をしっかりと掴む。本能で思う、このままでは血を吸われてしまう……と。でも動けないのなら、どうしろっていうのだろう?
冷たい空気が頬を撫でる、目の前のヴァンパイアを怖いと思う。
あれ……前にも同じこと、なかったっけ?