第14章 birdcage 枢√
「珠紀が一条や錐生君と話していたり、大事に思っているのを知るだけで気が狂いそうだった。全部、壊してしまいたいと思うようになった。君だけだ……僕をこんな情けない男に出来るのは」
「そんなこと……」
「僕だけが君に触れていたい、そう許されていたい。きっと君にあの日、花を贈った日から僕は惹かれていたのかもしれない。君の無垢な心に」
そんなに綺麗な物じゃないのに、人間なんて浅ましくて妬ましくて汚らわしいだけなのに。小さな世界の中で、私と枢は月に照らされながら互いの輪郭を確かめるように触れる。
手、髪、頬、肩、唇。
どれも自分にあるもので、けれど他人というだけでまったく違うものに変わっていく。
「私、枢が好きです」
気付けば口から出ていた。
枢のことを思うだけで、いつだって私は優姫に嫉妬する気持ちを抑えられなかった。気持ちを自覚した後は、どれだけの時間をこの人と過ごせるのかと考えていた。
まさかこんな形で、ヴァンパイアになったことで叶うなんて思いもしなかったけど。
「……それを聞いて安心した。珠紀、僕にはね……やらなくちゃいけないことがある。その為に誰かを傷つけるかもしれない、君の大切な友人を利用するかもしれない。それでも……僕のことを、好きだと言える?」
「……はい」
自信なんてない。ただ……そうなったとしても、今更この人を嫌いになれるわけがないと思っただけの話。