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Bloody Signal

第14章 birdcage 枢√



「枢……? 今、なんて……」


 聞き間違い? 枢は静かに息を吐いて、噛みしめるようにもう一度言葉を紡ぐ。


「愛してる」


 頭の中が空っぽになっていく。彼の言葉だけを聞いて、それだけを自覚して……それでも、信じられない。だって信じられるわけがない。彼が大切なのはいつも優姫で、私はおまけみたいなもので……だから。


「そんな冗談なら……口にしないで下さい。悲しくなる、だけです」


 貴方の傍に居たいと願った。優姫じゃなくて私を、私を選んでほしいと願った。枢のことが好きなんだと気付いて、だからといって急に何かが変わるかけじゃなかったけど。ヴァンパイアである自分を受け入れることが難しくて、けれど枢は一緒に背負ってくれると言ってくれた。

 とても嬉しくて、言葉にすることが出来ないくらい嬉しくて。


「私は枢の傍にいれるなら、それでいいんです。それ以上は……何も」

「僕が嫌だ」


 頬を包み込む彼の冷たい手。じっと見つめ合って、互いの瞳の中に自らが映っているように見える。こんなにも近くて、けれど心は何処まで近付いている?

 枢はゆっくりと言葉を紡ぐ。


「僕は……ずっと優姫だけを見てきた男だ。優姫の為だけに、あの子の幸せの為に……他の何を犠牲にしても。それでも……僕はあの子を守っていきたかったんだ。そうだね……でもね珠紀。僕は知ってしまったんだ」

「枢……」

「損得関係なく、大事にしたくなる女の子の存在に」


 彼の柔らかい唇が、私の額にそっと触れる。優しくて、嬉しくて、嘘みたいで、わけがわからなくて……どうしてか涙が零れた。

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