第13章 appeal 枢√
「まさかとは思うが、お前……"ヴァンパイア"にでもなったんじゃないだろうな?」
「……っ!」
「……。おい、冗談はやめろよ……珠紀っ!」
痛いくらい、零の手が私の両肩に食い込む。そうだよね……嫌、だよね。
彼は……理由は知らないけれど、酷くヴァンパイアを嫌っている。それなのに、私がヴァンパイアでしたなんて……。
「ごめん。ごめん……なさい」
「なんで、なんで謝るんだよ……」
「私……もう、私は……」
「……どうして、お前が……ヴァンパイアなんかに」
絶望に似た声が聞こえた。謝ることしか、思いつかなかった。
「ごめんなさい。私も……自分がどうしてこうなってしまったのか、まだちゃんと理解できてないの。ごめんね」
そんな顔をさせてごめん、苦しませてごめん。
「本当に……ごめん、なさいっ!」
「……! 珠紀っ!!」
零の手を振り払って、私は彼から離れるように走り去る。一緒にいるだけで傷つけてしまうくらいなら、私を見る度にあんなに悲しい顔をしてしまうくらいなら……もう二度と、彼の前には現れない方がいいんだ。
だんだん走っていくと、自分が今何処にいるのかさえ曖昧になっていく。もういいの、何処にだって……行けばいいんだ、私なんて。