第13章 appeal 枢√
「一条さん?」
「あれ、珠紀ちゃん? 部屋で休んでるって聞いてたんだけど」
「いえ……やることがなくて、つい」
「そっか。あ、隣座る?」
笑顔でそう誘われてしまえば、そうする他なくて……お言葉に甘えて、一条さんの隣に腰掛けた。
「枢から聞いたよ。明日から珠紀ちゃん、夜間部の生徒になるんだね」
「……はい」
どう思っているんだろう? 気持ち悪い、とか……? 拒絶されちゃったらどうしようもないよね。何も答えられないまま、俯いてしまうと……ふわりと頭に柔らかい感触がした。
「えっ……と?」
「どんな事情があってそうなったのかは、僕にはわからないけど……今の君は僕らと同じヴァンパイアなんだと思っていいのかな?」
「はい、大丈夫だと……思います」
「本当に?」
「え?」
一条さんが突然本を取り落すと、私の腕を引いて彼は腕の中へと私を閉じ込めるように抱きしめた。
「一条、さん?」
「不思議だね……珠紀ちゃんと会うと、何もかもどうでもよくなって……ずっと一緒に居たいって思ってしまうんだ」
優しい腕の中。気付けば、一条さんは私にこうして手を差し伸べては、私を笑顔にしてくれる。太陽みたいに暖かい不思議な人……枢とは、また違う……人。
彼の顔を覗き込めば、やっぱり優しく笑ってくれるものだから……。