第12章 夢
「あれ? 買ったの?」
彼が私の部屋に入った瞬間、私に尋ねる。
「そっか! これ、まだ見せてなかったね。買ったの!」
何を買ったかと言うと…
電子ピアノ!
私はしばらく前からピアノを習い始めた。
なぜかというと、幼稚園の先生目指しているから。
まあ、まだふわっとした夢なんだけど…。
「へぇー。さぞ上手くなったんだろうねぇ」
彼がちょっと小馬鹿にしたような口調で言う。
「上手くなったよー。聴かせてあげようか?」
「うん」
彼は楽しそうに、ベッドに腰かける。
私は張り切って、電子ピアノの前に座る。
「じゃあ、どんぐりころころを弾きまーす」
私は演奏する。
実はまだ、かなり下手。
こんなの子供の頃、ピアノを習ってた人なら余裕で弾くんだろうけど…。
だからこそ、今からでも一生懸命練習しないとなぁ。
つくづく思う。
ところどころ、つかえながら演奏を終える。
「どうだった?」
私はにっこり笑って振り返る。
……。
真司は泣いていた。