第8章 友達
部屋の灯りを全部消してみる。
なんにも見えない、と思ったけど、慣れてくると表情はわかる。
暗い中、真司にぎゅーって抱きしめてもらう。
なんか…すごくいい感じ。
「なんかね…これ、すごくいい。真司の身体をすごく感じる」
「そっか。よしよし」
「うふ…泣いてもバレないかな? これなら」
「泣いているの? みなみ」
「ううん。まだ」
「そっか」
彼が私の髪を優しくなでなでする。
「さっき、みなみ。うちの母のことを聞いていたけど」
「うん」
「今の母は後妻なんだ。僕を生んでくれた母は僕が小学生のときに死んだ」
「…そうなんだ」
初めて聞いた。
「だから、父と一緒に働いてるんだろうね。家で僕といても間が持たないだろうし。
おかげで放課後、好き勝手できる」
彼がふふっと笑う。
「仲悪いの? 真司とお母さん」
「悪くないよ。良くもないけど。でも感謝はしてるつもりだよ。洗濯とか…弁当も作ってくれるしね。毎日」
「優しいんだね」
「そうだね。親切だ」
「ふふ…」
こういうの…なんて言ったらいいかわからないけど、ただ聞いてるだけでいいのかな。
「だいたい、コミュ障な僕に、継母と付き合うとかハードルが高すぎる」
「ふふ…コミュ障なんだ」
「そうだよ。だから友達がいない。僕の友達は…みなみだけ」
「同じだね、わたしと」
私は彼の顔を見上げる。
暗いけど、彼が少し微笑んでるのはわかる。
「みなみ…僕と友達になってくれてありがとう」
なんか照れる。
「どういたしまして」
私たちは唇を重ね、キスをした。