第7章 恋
ちょっとぬるめに沸かした湯船に2人で並んで入る。
ちょっと狭いけど、いい感じ。
「気持ちいいねぇ」
「そうだねぇ」
「みなみのお父さんとお母さん、温泉行ってるんだっけ?」
「そうだよ。ふふ…お父さんとお母さんも今頃、一緒にお風呂入ってたりして」
想像して私は笑う。
「仲いいの? お父さんとお母さん」
「仲いいんじゃない? 一緒に旅行行くぐらいだし」
ちょっと考えて、私は答える。
「いいね」
彼がにこにこする。
真司優しいな。
「真司のとこは? お父さんとお母さん、仲いい?
そういえば、真司ってあんまりそういう話しないよね。お母さんもいつも家いないし」
私が尋ねると、彼は少し考えてから答える。
「普通だと思うよ。別に話すようなこともないから話さないだけ。
母はね、父の事務所で一緒に働いてる。帰りも一緒に帰ってくるから遅いんだ」
「それって、かなり仲いいんじゃない?」
「そうかな」
私が笑うと、彼も笑った。
「ねぇ」
私は彼にぴとっ…てくっつく。
お湯の中でくっつく彼の肌。
なんか気持ちいい。
「真司…わたしと結婚してくれる?」
私は彼の顔を見上げて言う。
……。
「えっ…プロポーズ?」
真司がちょっとびっくりしてる。
「うん」
私はにっこり笑って頷く。
「えっと…」
考えてる…。
私は彼の顔をじっと見つめる。
「みなみ…。さすがに…それは…もう少し考えたほうがいいんじゃない?」
断られた!
「そっか…」
私は浴槽の中で体育座りしてうつむく。
「あっ…みなみに問題があるんじゃないよ。僕が…僕はそういうのにはきっと向いてないというか…なんていうか…」
彼が口ごもる。
「いいよ」
私は再び彼の顔を見上げて笑う。
「また言うから。何回でも言う」
「みなみ…」